私は、車
音痴である。
というよりは、
車に興味関心が
ほとんど ない。
と、
大きな声で叫びたいのだが、そんなことが師匠の
耳に
入ろうものなら、
「 興味関心がないと
結論づけられるほど、多くを
学んだのかね?」
と、
いたいいたいいたい デコピンが
飛んでくるのである。
それ
故に、あえて
音痴だと言わせていただく。まあ、つまりは
疎い。
あ。だからペーパードライバー歴が長いのか。おかげさまで無事故無違反ゴールド免許。
だから、
どのメーカーの
どの車とか言われても、全く想像
すらできない。こんな
マーク、あんな
マークの車は
高級車、というくらいは把握している
(つもり)。
そういえば、実家に帰った時のこと。
オジジと
車に乗っていると、突然、
「
前を走っている
車って、確か・・・
ブ ジョーだよなあ 」
ブジョー・・・?聞いたことがあるような、ないような。目を凝らすと、
ライオンのようなマークが見える。あのマークは
確か・・・。
「 それって・・・
プ ジョー
PEUGEOT でしょ! 」
という
突っ込みくらいなら、
即座に出来る。まあ、それが
限界であるが。
だが、そんな
私でも
立派な
(行使していない)、
免許資格取得者である。よって、車に
疎いとばかり言ってはいられない。とくに
茨城に越してきてからは、車がないと行動範囲は
狭まるばかりである。でも、
エコの時代だから
(言い訳)、なるべく徒歩と自転車に
重きを置きたい気もする
(逃げ)。かといって、いつまでも師匠の助手席に
座っているわけにもいかない
(寝ているし)。
が。
どんな車が
好きかと
問われても、とくに
これといった、
具体的な
回答を持ち合わせていない。だから師匠に尋ねられたとき、
こう答えたのだ。
「 どんな
車なら
乗ってみたいの? 」
「
きゅきゅきゅっ と
曲がれて
止まれる車 」
師匠が一瞬、言葉に
詰まったのは言うまでもない。
あらっ?何か変なこと言いました,私?
一方、師匠は車が
好き。好きとは言っても、
好きなのは車の
仕組み。
エンジンはこうでああで。シリンダー式はこうでああで。ロータリー式はこうでああで。ハイブリッド式はこうでああで。乗るとこんな違いがあって。エンジンの位置はこうでああで。こういう違いがあって。
ちょっと一息、師匠の豆知識。タイヤメーカーで有名なブリヂストンは、元々は足袋を作っていた会社である。人の足から車の足へ。
へえーふーんほおー。おもしろいなあ。あ。結局、余談しか覚えてないわ、私。
ひとしきり
熱 く語った後、師匠はたいてい、こう
締めくくるのだ。
「 ねっ?
すごい技術でしょ? 」
が、弟子は
ちんぷんかんぷんはとぽっぽ。元々、車には
何の思い入れもないのだから、
頭に入るわけがない。師匠の熱い思いは
からんからん 空回り。もちろん、そんな弟子の「
はとっぽっぽ」的表情に気がつかない師匠ではない。
「
難しい話だったかなあ。
つまらない話だったかなあ・・・ 」
寂しそうに
悲しそうに
申し訳なさそうに呟くので、弟子は即座に、
「
全 く、そんなことない。ちゃんと
聞 いているし、
理解 していますよ 」
と、
全力で、
精一杯、
力強く励ますのである。
私の場合、車に限らず
物事
全般、仕組みを知らず、技術を理解せずに、
「
動けばいい、
使えればいい、
壊れなければいい 」
という「
いい」加減
三原則を貫いている。師匠からしてみれば、私の思考の「
仕組み」は理解し
難いようだ。
そんな
私でも、構造や技術がとても気になることがある。
このパンは、何の生地?どんな粉?どんな酵母?どんな配合?どう捏ねてどう発酵させてどう焼いている?どんな技術があれば作れるんだろう?
パンを一口一口食べながら、頭の中は「
どんな」の連続。パンに限らず
料理でも、レシピの中に秘められた、食材の
組み合わせをじっくり
眺めるのが好き。
これとそれ。それとあれ。完成するとどんな味?
組み合わせの「
妙」をまずは
頭で堪能し、さらに料理を一口いただいて、
なるほど!仕上がりはこうなるのか。おもしろいなあ。
と
舌とお
腹と
心で満足するのが、私にとっての喜び。
ケーキはさらに、
謎の「
人」。それ
故、なおさら興味
深い。
このケーキは、どんな「構造」なの?どんな生地なの?クリームなの?それを作るには、どんな「技術」が必要なの?ベーシックなショートケーキ、ロールケーキ、シュークリーム、タルト、ミルフィーユ、ショコラ、エトセトラ。完成品をばらばらに分解して、「部品」に分ける。さらに部品を解体して、素材にまでたどり着く。ああ、なるほど。こういった物でこう作るのね。
いわゆる
逆回し。
ケーキを「
構成」する「
部品」、即ち「
基本」が
知りたいのだ。あるひとつのケーキを
作れたとしても、私の頭はモヤモヤの
まま。一話完結ではなく、
次へ
次へと展開していくような、
連続性が
欲しいのである。
「
基本」から「
応用」へ。
そんな
思いをかなえてくれる場所がある。南仏家庭料理・フランス菓子・天然酵母のパンが
学べる空間
monchouchou(モンシュシュ)。やりたい時がやる時とばかりに、えいやっと勢いをつけて、
フランス菓子基礎講座へ、いざ
突入。
やると決めた後、後悔するのがいつものパターン。ああ、無謀だったかなあ。
monchouchouの基礎講座、なんといってもカリキュラムの
構成が魅力的。最初に「ケーキ」ありきではなく、
骨格をなすのは、
生地(パート)である。
パート バテュプッセ・パート プリゼ・パート フィユテ・・・というように、まずは基本の生地ごとに
大分類。さらに、パート バテュプッセをパーター カトルカール・パーター シュー、パーター ジェノワーズ・パーター ビスキュイ、フォンド シュクセのように
細分する。
では、それらの
生地を使って、こんな
クリームを作って、こうしてああして組み立てていくと、ほらっ、こんなお菓子が完成!
最後にようやく、「ケーキ」が登場する。我々の
関心は、「完成」したケーキよりも、その
工程と生地やクリームなどの「
部品」に向くようになるのだ。
ケーキの「構成」と「部品」を
理解しやすい、ありがたいカリキュラムである。
Leçon1~3 パート バテュプッセ。卵とバターを使った生地。卵とバターの温度が重要。それと混ぜ方を学ぶ。
Leçon1 La pâte à quatre –quarts パーター カトルカール。
「カトルカール」は、バター+砂糖+卵+粉の4つの材料が、それぞれ「1/4」の配合のバターケーキ。パウンドケーキ(1パウンドずつ同量の配合という意味)と同じもので、バターケーキの基本である。
Leçon1 Pâte a choux パーターシュー。
シュークリームの「皮」を覚える。
生地以外の「
部品」として、クリーム(カスタードとバタークリーム)2つとグラサージュ1つ(コーティング用のショコラ)が必要。
まずは
Religieuse ルリジューズ。
クレームパティシエールショコラをギュウッと詰めたら、グラサージュをかけて、はい、雪だるまみたいにポンッっと重ねて。
ちょいちょいっと、クレームオブールカフェで飾ったら。

はて?どなた様?
religieuse「修道女」の姿に見立てたお菓子とのこと。日本人の我々には、あまり馴染みのない姿なのでイメージしにくいが、愛らしい姿に変わりはない。
同じくパーターシューを使った
Éclair エクレア。
「稲妻」の意味。
ルリジューズと同じく、ギュウッとクレームパティシエールショコラを絞って、グラサージュをかけて、クレームオブールカフェでおめかしを。
Leçon2 Pâte a génoise パーター ジェノワーズ。泡立て方と粉の混ぜ方を学ぶ。
さて、まずはセルクルさん、いらっしゃい。
不可欠な「部品」のひとつ、卵さま。
真っ赤な美味しい苺どんが、実は主役かも。

苺の美味しい季節に作りたい。
ジェノワーズとは、全卵を泡立てて作る方法で「
共立て法」と呼ばれる。

私も大好き。日本人好みの、ふんわりしっとりスポンジが焼き上がる。
生地以外の「
部品」として、クレーム ムスリーヌ(クレームパティシエール+バター)+クレームオブール パーターボンブが必要。
出来上がりを想像しながら、組み立てていく。

イメージするということも、大切なこと。
はい、完成。
Fraisier フレジエ。
美しき苺のケーキ。
少し室温に置いて、クリームの口溶けが滑らかになるようにしてからいただくと、より美味。いわゆる「苺のショートケーキ」とは全く別物である。クリームが濃厚で、味わい深いケーキ。「おおっ」という軽い衝撃を感じながら、私は一口一口、味わってみた。
Leçon2 Pâte a Biscuit パーター ビスキュイ。
ジェノワーズに対して、卵黄と卵白を分けて泡立てる「
別立て法」。
Biscuits de leims ビスキュイ ドゥ ランス。

ランスとは、シャンパンで有名なランス地方のこと。シャンパンに浸しながら食べるらしい。「カリッサクッホロッ」の食感とほのかな甘味を楽しみたいので、私はこのまま食べるのが好き。今まであまり意識して食べたことがなかったが、ビスキュイ生地、好きかも。
フランスでは、「
メレンゲをたてて作るお菓子」を何でもビスキュイと呼ぶらしい。ビスキュイ ドサヴォワ、ビスキュイ アラキュイエール、ビスキュイ オザマンドのように、ビスキュイの
後ろに付く「言葉」によって、いろいろ種類が
変わる。
そういえば昔、
プチプチ専門学校の時に、「ビスキュイ何とかという生地を習ったような気がする・・・」と思い、うろ覚えな
(危険)知識をふと口に出してみた。
「 先生、ビスキュイ
ド コン
ジョという生地もありましたよねえ・・・? 」
一瞬、宙を見つめてから、先生が答えた。
「 それは・・・ビスキュイ
ジョ コン
ド、ですね? 」
ドコンジョ→どこんじょう→ど根性?
まあ、つまりそのぉなんだ・・・。私のレベルは
それくらいのものである。
「
あれは何?
これは何?
それはどうして?
これは何故? 」
ナゼナニドウシテ星人に化した我々からは、矢継ぎ早に質問が飛ぶ。先生は、ひらりひらりと身をかわしながら、ひとつひとつ丁寧に答えてくれる。見て感じて覚えることも大切だが、どうしてそうなるのかという
理論を知らないと、
納得するまでに時間がかかる。
「 お菓子作りは、
化学ですから 」
実践はもちろん大事。でも、理論だって力強い
味方になってくれるのだ。
見て聞いて感じて、
学ぶこと。それはそれは数え切れないほどある。とにかく片っ端からメモを取る癖があるメモ魔の私は、とにかくメモメモメモメモメモ。あとは、全体的な流れと大まかなポイントをつかむので精一杯。
よしっ。もうちょっとがんばろう。
Leçon3 フォンド シュクセ。Leçon1・2のちょっとした応用編。
セルクルとプラリネを用意。

簡単に言えば、ローストしたナッツのペーストがプラリネ。
シュクセは、Leçon2 ビスキュイの生地と作り方が似ている。

くるくるくるくる、きれいに絞って焼き上げる。
クレームオブール プラリネを、まるく絞って、フォンド シュクセでサンドする。

クリームの上に、ぱららんっとヌガティーヌを散らす。
カリカリッとした食感とナッツ&キャラメルの香ばしさが、いいアクセントに。
Succes praline シュクセプラリネ。素朴。でも、一度食べたら記憶に残る。

クリームの口溶けがほどよい状態な時に食べるのが、ベストとのこと。
さあ、みんなで記念撮影会。

それぞれ個性があって、思い入れもあって。心のこもったケーキたち。
ほっと一息。

シュクセ プラリネには、濃いめのコーヒーがよく合う。
「教えて
もらうこと」「学
べること」、それがいかに貴重なことかを、しみじみ感じる時間。「教えてもらう」機会というものはあるようで、実は滅多にない。
が。
どんなに充実した時間でも、許容範囲というものがある。
ぼろぼろぼろぼろぼろぼろ。
先生の言葉が、目から耳からこぼれ
落ちていく。
ぽんぽんぽんぽんぽんぽん。
ペンの先から、メモの端から、文字がどんどん弾け
飛んでしまう。
ちょっと休憩しましょう。
深呼吸。
ふうっと力を抜いて、心に隙間を作ろう。

ある日のちょっと一息。フキノトウのクリームパスタでお昼ごはん。
またある日は、たっぷりフルーツサラダ。

ミントの香りで目が覚める。
またある日は、チェリーのコンポート。バニラアイスと一緒に。

フレッシュな印象。やる気復活。
楽しい美味しい満足。
ご馳走様でした。
で。
終わるわけにいかないのが、このフランス菓子基礎講座。
さあ、あとは復習あるのみ。少しでも自分のものにせよ。そうしないと・・・。
あわわわわわわわわわわわわっ。
人気blogランキングへ←ランキングに参加中でござる。プッチンお頼み申す。